第2話


デンテル:デンテル・アイネル

アーベル幼少期:アーベル幼少期。少年声できる人なら誰がやっても可。出番少

アドエル:アドエル・クィズリー。ルドルフと対立する

 

アーベル:アーベル・サルマン

 

シエル:シエル・マグナガス。出番少

  

ダーヴィン:ダーヴィン・スレイフ

マール:マール・フィッシモ。ルドルフの昔からの同期。出番少 

 

ルドルフ:ルドルフ・バイコ。出番多

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レイトン:レイトン・コナー。出番中

 

ディズビー:ディズビー・メイスン。出番少

 

 

店主:アーベル、デンテル以外なら誰でも。登場シーン1行

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 :     本編

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アーベル:『俺の知る世界は、いつだって色が無かった。』

アーベル:『振り返る事無く過ぎてく人の群れ。周りから汚い言葉を吐かれようとも、見下されようとも、どの言葉も気にはならなかった。いつ見ても、どうやって見ようと、全てが同じに見えた。興味が無かった』

アーベル:『そこにある形も。音も。色も。全てが無機質。全てが無地。全てが灰色。』

アーベル:『だけど、ソイツだけは、灰色の世界で異色を放っていた』

 

ダーヴィン:よぅ、ボウズ。オメェにはこの世界がどう見える?

 

アーベル:『難しい質問だ。なにも感じなく、なにも変わらないモノに、価値観を見い出せない』

 

ダーヴィン:俺はよ、この世界がゴミ溜めに見えるのさ。そこに居るのが当たり前だと思ってやがる。そこで歩いてるのが当たり前だと思ってやがる

ダーヴィン:何も知らない癖して、悟ったかのように世界の流れに順応して生きてやがる。そんな世界が俺にはクソに見えて仕方ねぇのさ

 

アーベル:『当時の俺には、コイツがなにを言ってるのか理解が出来なかった』

 

ダーヴィン:起きて飯を食って、クソして寝る。それが生きてるって事なのか。目を開けてれば生きてるって事なのか。息をしてりゃぁそれは生きてるって事なのか?

ダーヴィン:俺は、もっと俺の生き方で生きてぇのさァ…!!

 :      

 :      銃をふところから取り出し銃口をアーベルに向ける

 :      

ダーヴィン:ボウズ。お前の目には、この世界が何色に見える?

 :      

 :      『灰色の世界』

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 :      アーベルがベッドから起き上がる

 :      間を開ける

 :      

アーベル:………また、アンタか。朝からアンタを思い出すと目覚めが悪くなるんだよ…。

アーベル:こう何度も同じ夢を見るようじゃ、何かに取り憑かれてるのかもな。(ベッドから立ち上がりながら)

アーベル:………たくっ………最悪な気分だ(ふらつき頭を押える)

 :      

 :      アーベルが部屋から出る

 : アーベル終始イラつきを見せる 

    :    

デンテル:あら、フォース。今起きた所かしら

 

アーベル:…あぁ。

 

デンテル:朝はずいぶんと目覚めが遅いのね。夜更かしでもしたの?

 

アーベル:黙れ

 

デンテル:低血圧?それとも単に寝起きが悪いのかしら。

 

アーベル:さっきからなんなんだ……

 

デンテル:貴方、凄い目付きよ。今すぐ私に襲いかかって来そうなぐらい

 

アーベル:そう思うんだったら茶化すな。放っておけ。

 

デンテル:貴方とお近付きになりたいのよ。そんな冷たい事言わないで欲しいわね

 

アーベル:こんな場所で仲良しこよしして一体ナニになる。俺はお前みたいなヤツ願い下げだ

 

デンテル:ダーヴィンは、貴方よりもっと前向きに私の対応をしてくれたのに?

 

アーベル:……俺の前でアイツの話しをするな。

 

デンテル:なぜ?貴方を親代わりにここまで育ててくれたのでしょ?毛嫌いするのは可哀想よ

デンテル:それとも…貴方が自分の手で殺した罪悪感で、毎晩うなされているのかしら?

 :      

 :      アーベルが銃をデンテルに向ける

 :      

アーベル:さっきから黙って聞いてればベラベラと……。ずいぶんとお喋りな事だな。

アーベル:言葉が通じない奴ばかりのようだが、ココは動物園かなにかか?無駄な事ばかり垂れるようなら…その口ごと撃ち抜くぞ...

 

デンテル:…ふふっ。ダーヴィンより痺れる目ね。だけど、ここでのドンパチは御法度よ。どちらが先に死のうが、どちらも最後には死ぬ事になる。お利口さんな貴方なら分かるはずよね

 

アーベル:……これはただの警告に過ぎない

 :      

 :      銃を下ろしアーベルが去る

 :      

アーベル:だが、度が過ぎる行動を取れば……次はない

 

デンテル:これから帰りの夜道は気をつけなくてはね?ふふっ。

 

アーベル:……くだらない

 

デンテル:性格はまるで違うけど、面影を感じるわ。貴方達の間に一体なにがあったのかは分からないけど……貴方の死が無駄にならない事を祈るばかりね。ダーヴィン

 :      

 :      間を開ける

 :      世界情勢統括機構、No.対策課

 :      

ルドルフ:いけっ!いけっ!!あと少し…!!……ダァァアア!?なんでそこで抜けねぇんだよォオ!!お前に一体いくら賭けてると思ってんだ…!!クソォ…!!

 

レイトン:あっ!!ルドルフさんこんな所に居たんですか!!

 

ルドルフ:おーぅ。

 

レイトン:今まで一体なにしてたんですか!!

 

ルドルフ:見りゃ分かるだろー!競馬だよ競馬ァ!!

 

レイトン:あーぁもう…!こっちは必死だったんですよ!?そろそろ総合会議の時間なのにどこ探しても居ないんですもん!!

 

ルドルフ:あー、もうそんな時間か。

 

レイトン:早く来てください!!また遅刻なんかしたらたまったもんじゃないですよ!!

 

ルドルフ:俺は行く気ないから勝手にやっててくれ

 

レイトン:そんなわけには行かないんですよ!!次こそなんて言われるか…!僕はまだ首を切られたくありません!!

 

ルドルフ:…はぁ…。たく、分かった分かった!行くって…!

ルドルフ:………部下のメンツのためにも、重い腰を持ち上げるとするか…

 :      

 :      間を開ける

 :      

シエル:それではこれから、世界情勢統括機構、No.対策課、総合会議を行なう。各支部からの定期連絡をし合い、No.への対策をより強固にしていくため、あらゆる情報を共有する。

 

レイトン:…なんであっちこっちにカメラなんか設置してあるんですかね…(ルドルフに耳打ちする)

 

ルドルフ:メディアだよメディア。あぁやって俺らはちゃんと仕事してますよーって外に流してるのさ

 

シエル:初めに東部の方から。何か情報はあるか?

 

アドエル:はい。最近起きている不可解な多数の事件。遺体は残っておらず、痕跡も残ってはいない場合がほとんどです

アドエル:ですが、残った僅かな痕跡でNo.の実体を予測しました。彼らは何人もの集団で出来ており、各々の特徴ある凶器を使用しています

アドエル:今、現状分かっている物は、大刃で鋭利な刃物。。更には大型マシンガンのような多数の銃痕も見つかりました

 

シエル:痕跡を消すと言っても完全には消せない物もあると言う事か

 

アドエル:以上が報告になります

 

ルドルフ:……はっ…バカバカしい

 

アドエル:………なに…?

 

ルドルフ:今やってる事が、バカバカしいって言ってるんだよ

 

レイトン:ちょっ…!?ルドルフさん…!?

 

アドエル:どうゆう意味だ

 

ルドルフ:毎度毎度こうやって総合会議だって集められてるわりに、何一つマトモな情報なんかありゃしない。

ルドルフ:だがどうだ、なに一つ進展もしてない癖に一丁前に仕事してる風な所を撮らせて、メディア発信して、俺達は税金泥棒じゃない!俺達はちゃんと仕事してるアピールだー!ってか?

ルドルフ:良くもまぁこんなんで、世界を統括してるだなんて言えたもんだよなぁ

 

アドエル:貴様!!発言に気をつけろ!!ここをどこだと思っている!!

 

ルドルフ:バカの集まりがコゾって馬鹿な話ししあってる、無意味な会議さ!

 

アドエル:未だにそんな減らず口を…!!

 

ルドルフ:いいか!No.関連の事件でほぼ消えた死体。残った少数の死体の身元判明が出来たのは、殺された数の僅か三分の一!

ルドルフ:更には三分の一のその半分の身元は、あくまでも予測に過ぎない!!No.のメンバーの名前は一人も突き止めてられてねぇ!!なに一つ実態を掴めていねぇじゃねえか!!

 

アドエル:だが!僅かながらも着々とヤツらに近づいて来ている!!凶器の判明や殺害された者の痕跡から多少なりとも特徴が……!!

 :      

 :      ルドルフが勢いよく机を叩く

 :      

ルドルフ:そこが分かってねぇ!!

 

アドエル:………!!

 

ルドルフ:……痕跡はたまたま残ってるんじゃねぇ。わざと残されてるのさ

 

アドエル:……バカな……。なぜそんな事を…

 

ルドルフ:普通のプロの殺し屋であれば、痕跡なんて物は一切残さない。跡形もなく全ての痕跡を消す。だが、コイツらもプロの殺し屋だと現場で語るわりに、痕跡を残している。それも派手な痕跡だけだ

ルドルフ:いかにもNo.だと分かる痕跡を残し、未だにヤツらの一人も捕まえられていないこの現状。つまりは俺達に訴えてるのさ…!

ルドルフ:「どうやっても俺らを捕まえる事は出来ない。それだけの力と余裕がある」ってな

 :      

 :      ルドルフがタバコを手に取り出す

 :      

ルドルフ:No.対策課の中でも消えてった奴が数人居る。理由はどう考えても、コイツらの存在に近づいたからだ。

ルドルフ:俺達は、このNo.って言うデカい闇にただ転がされてるに過ぎねぇのさ

 

アドエル:……くっ……さっきから勝手な事をベラベラと……!

 

ルドルフ:………(ルドルフがタバコを一服する)

ルドルフ:今やAIが俺達の生活のほぼ全てを担う時代だ。事件の捜査も大体がこの時代のやり方にそっていれば、勝手になんでも解決してくれちまう。

ルドルフ:ずいぶんと便利になった事だが、それは俺達人間が退化してるも同然。今の俺達のやり方じゃあ、永遠にヤツらを捕まえる事なんか出来やしねぇよ

 

シエル:……ならば、君には何か考えがあるのか?この今の状況を打破する策を…

 

ルドルフ:…………へっ…

 :      

 :      ルドルフがニヤケヅラ睨みつける

 :      

ルドルフ:そんなモンねぇよ

 

レイトン:はぁぁああ…!?ルドルフさん!!自分からあんな事言っといてなんなんですか!!無駄にカッコつけて恥晒すのはやめてくださいよォ!!

 

アドエル:まさか…そっちの地方は、こんなヤツらばかりで構成されてるのでは無いだろうな…!

 

レイトン:ひぃい…!!すみませんすみません!!この人がおかしいだけなんです!!この人だけが毎度問題起こすだけなんですぅう!!

 

ルドルフ:俺はなんとしてでも、奴らを追い詰める…!どんな手を使ってもだ…!!

 

シエル:……例え自分の命すら危うくなってもかね?

 

ルドルフ:当たり前だ。死ぬ覚悟は、いつだって出来てる

 :      

 :      ルドルフが部屋から出ていく

 :      

レイトン:あっ!?ルドルフさん!?……あぁぁぁあもうぅう…!!すみません!失礼します!!

 :      

 :      レイトンも後を追って出ていく

 :      アドエルが机を叩く

 :      

アドエル:一体なんなんだ…!!あの男は…!!

 

シエル:彼は昔からあぁゆう性格だ。あれでは誰も手に負えないと言われても仕方あるまい

 

アドエル:マグナガス局長!あの者をそのまま野放しで良いのですか!?

 

シエル:……。

 

アドエル:私は納得いきません!あんなのが居ても私達の邪魔をするだけです!!

 

シエル:だが、彼の手腕で今までの未解決事件が片付いたのも確かだ

 

アドエル:………っ

 

シエル:今回も同じようにとはいかないかもしれないが、あれ程啖呵(たんか)切ったんだ。彼もなにかしら動いているだろう

シエル:君の目には、今、なにが見える…?ルドルフ・バイコ

 :      

 :      間を開ける

 :      

レイトン:いい加減にしてください!!

 

ルドルフ:…………。

 

レイトン:なんなんですか…!いつもいつもあんな事ばかりして!

レイトン:僕はまだここに配属されて間もないんですよ…それなのに貴方のような人間の傍にいる事になってから、散々です……!!もう着いて行けません…!!

 

ルドルフ:……そうだな。もう十分だ

 

レイトン:……え……?

 

ルドルフ:ここからは俺一人で行動する。上には俺から厄介払いされたとでも伝えておけ。そうすれば事情を飲んで他の部署に行けるやもしれん

 

レイトン:……いや…ちょっと待ってくださいよ…!

 

ルドルフ:ここからは、新人が顔出すような話しじゃねぇ。じゃあな

 

レイトン:…………ぁ……

 :      

 :      ルドルフが背中を向ける

 :      

レイトン:……なんなんですか……。ホント……勝手過ぎるんですよ…。えぇ、いいですよ……!いつも通り勝手にしてください!!

 :      

 :      レイトンがその場から走り去る

 :      間を開ける

 :      

マール:おい、そんなんでいいのか?ルドルフ

 

ルドルフ:………なにがだ

 

マール:お前が何を考えてあんな事言ったのかなんて、分かりきってる事だ

 

ルドルフ:……ふっ…。いいんだよ。これ以上はやめとくに限るさ。これ以上は……あまりにも危険すぎる…

 

マール:どうせお前は辞める気ないんだろ

 

ルドルフ:………あぁ

 

マール:……昔からお前は変わらないな

 

ルドルフ:おうよ

 :      

 :      ルドルフがタバコを取り出す

 :      

ルドルフ:俺はいつだって…バカで生きてるのさ

 :      

 :      ルドルフが立ち去る

 :      

マール:…………不器用の間違えだろうが。(ボソッと)

 :      

 :      間を開ける

 :      人気のないコンテナ倉庫

 :      

ディズビー:…ガハッ………くっ……(吐血)

 

アーベル:まだシラを切るつもりか?

 

ディズビー:………私は……本当にもう…何も知らないっ……!

 

アーベル:お前の家族は、西南の住宅地に腰を据えていたな。

 

ディズビー:………!!

 

アーベル:妻の名前はアンディ・メイスン。子供は一人娘。名前はアイラ。もうすぐで三歳か

 

ディズビー:なんでそんな事を……!!

 

アーベル:お前は家族を守るために、自分の戸籍情報や自分に関連する全てを偽装した。常に帰りは家から離れた場所。そうやって家族を自分から遠ざけた。

 

ディズビー:……待ってくれ…!私はこんな事知らなかったんだ…!!まさか…私の働いてた場所が…アンタらと繋がってたなんて……

ディズビー:誰にも言わない!!私はなにも知らなかった!!

 

アーベル:………。

 

ディズビー:いや!せめて死ぬなら私だけだ…!!家族は何も知らない!!私が巻き込んでしまっただけなんだ…!!

 

アーベル:全ては事を知った事実に意味がある。お前に死の宣告が渡された。これが現実だ。

 

ディズビー:頼む…!家族だけは……!!私の家族だけは……!!んんっ……!?

 :      

 :      アーベルがディズビーの口元に銃口を突っ込む

 :      

アーベル:世の中は、全てが不条理に出来ているんだ

 :      

 :      一発の銃声が鳴る

 :      

アーベル:全てをお前一人に背負わせはしない。ただただ、死ぬ順番が変わっただけに過ぎない

アーベル:……あぁ、そうさ。いつだって……この世は不条理で出来ている

 :      

 :      間を開ける

 :      アーベル幼少期にさかのぼる

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アーベル:『俺は気付けばそこに立っていた。何も知らないまま気が付けばそこで必死に働いていて』

アーベル:『他に生きる術(すべ)はなく、行くあてもない。どれだけ罵倒されようと、どれだけ辛かろうと、必死に生き延びた』

アーベル:『捨てられた残飯を広い漁り、どれだけの労力を強いられようとも、生き続けた』

 

店主:なにをチンタラしてやがる!!休んでんじゃねぇ!!さっさと働け!!

 

アーベル:『例え視界がボヤける程殴られても、俺の目から色が無くなっても、がむしゃらに生きた。何も考えず、ただひたすら生きた。そうやってずっと生きてきた。』

アーベル:『だけど…ある日気付いた。少し考えれば分かる事だった。至ってとてもシンプルだ』

 :      

 :      血溜まりの中に子供が立っている

 :      

アーベル:『そうか………』

 

アーベル幼少期:…人って……簡単に死ぬんだ……。

 

アーベル:『そう気付かされたのは、五歳になった時だった』

 :      

 :      女の子と守ろうと抱きしめている母親に銃を向ける

 :      

アーベル:そしてココが…今の俺が辿り着いた、生きる術(すべ)だ。

 :      銃声が二発鳴る