表面上のシンパシー


神藤 轟木:(じんどう とどろき)

水無 海空斗:(みずなき みくと)

 

轟木:…必要な物は揃った。もう、用は無いな

 

0:周りを静かに見渡し、USBメモリーをポッケにしまう

 

轟木:………これで、ココともおさらばか

 

海空斗:行かせねーよ

 

轟木:…!!

 

海空斗:…お前、こんな所で何してるんだよ

 

轟木:…それはコチラのセリフだな…。最近監視されてる様に感じて居たけど、やはり君だったか

 

海空斗:見られちゃマズイ事でもしてるのか?

 

轟木:……生憎(あいにく)、僕は男性にそうゆう趣味は持ち合わせていないよ

 

海空斗:とぼけるな…!(食い気味)

 

轟木:………。

 

海空斗:まさかお前が今まで何をしていたのか知らないとでも思ってるわけじゃないだろう?情報統括機構であるココに忍び込んで、何もしなかったなんて言葉が通じる程甘くはない

 

轟木:………いつかはこんな日が来ると思っていたさ…。察しのいい君の事だからね

 

海空斗:……今からでも遅くない。こんな真似やめろ

 

轟木:………。

 

海空斗:今なら情報を盗んだって気づかれていない。セキュリティシステムに引っかかる前に全てをなかった事にしろ

 

轟木:僕には時間が無いんだ。君とこうやって戯れる時間も惜しい

 

海空斗:何だと…!?

 

轟木:そこを退いてくれ

 

海空斗:……いつからだ…

 

轟木:………。

 

海空斗:…いつから騙してた…!!

 

轟木:…無意味な質問だ

 

海空斗:答えろっ!!

 

轟木:……最初からさ。最初からこれが目的で僕はココに来た。裏切られた、騙したなんて馬鹿な話しだ

轟木:僕は最初から君達と慣れ合う気は無かった。君が勝手にそう思って1人舞い上がってたに過ぎない

 

海空斗:……クッ…!

 

轟木:君はココが一体何のために出来たのか知っているか?

 

海空斗:…何を言ってる…

 

轟木:一体何が行われているのか自分で分かっていて、ココに居るのかと聞いているんだ。君のたった1人の大切な家族である妹が、ココの実験体になった事をしっかり理解しているのか?

 

海空斗:……どうゆう……事だよ……!?

 

轟木:君だけじゃない。今の技術が出来上がるまでに、まさか何も犠牲にせず、現在まで辿り着いたなんて思っていないだろう?

 

海空斗:お前は何を言ってるんだ…!!

 

轟木:いい加減目を覚ませ!!ココは君の家族を殺した敵(かたき)なんだぞ!!

 

海空斗:嘘だ!!

 

轟木:妹が死んだ状況をよーく思い出すんだ!未だに死体も見つかっていない!!

 

海空斗:黙れ!!

 

轟木:………。

 

海空斗:……ずっと騙していたお前を…お前の言葉を信じれると思うのか…!

 

轟木:…………いずれ分かるよ

 

0:しばらくの沈黙

 

轟木:…もういいかな。君の質問にちゃんと答えた。僕は行くよ

 

海空斗:行かせない…!

 

轟木:………。

 

海空斗:お前が何を考えてるのかは分からない…!だが、どんな理由であろうと行かせるつもりは無い!!全部分かるように説明してもらうぞ!!

 

轟木:…そうか……。なら、仕方ないね

轟木:…フンっ!!

 

0:轟木が海空斗を殴る

 

海空斗:ガハッ!?

 

轟木:あまりこうゆうやり方は好きじゃないんだけど、時間がないから手段は選ばない

 

海空斗:…おま……えっ……!!

 

轟木:僕には背負う物がある。果たさなきゃいけない…復讐を…!

 

0:過去が甦る

0:間をあける

 

海空斗:よっ。アンタが最近来た新人か?

 

轟木:あ、はい…!

 

海空斗:俺も最近来たばかりだから敬語は無しでイイよ。俺は水無 海空斗:。これからよろしくな

 

轟木:…あぁ!僕は神藤 轟木:だ。よろしく

 

0:間をあける

 

轟木:完全なるAIシステム…オラクルシステム。君はコレについて、どう思う?

 

海空斗:…どう思うって?

 

轟木:僕達は思考を止め、全ての考えをオラクルに委ねて来た。それは生活の快適さと何不自由ない人生を皆、平等に与えられてきた

轟木:けどそれは、僕達が自分達で生きる事を止め、この世界に生かされてるだけの木偶人形(でくにんぎょう)に過ぎない…

 

海空斗:……。

 

轟木:…オラクルシステムに刃向かってきた人間が…自分の意思で生きようと足掻いた人が一体どうなるか……君は知っているか?

 

海空斗:…野暮(やぼ)な質問だ。こんな場所でこんな質問を投げかけるなんて…アンタはどうかしてるよ。俺らがオラクルシステムの管理課であるにも関わらず、そんな疑念を持つ事自体…間違ってる…。

 

轟木:………僕は……オラクルを肯定してココに居るんじゃない。あくまでも…見定めるためにココに来たんだ

 

海空斗:……アンタは変わった人だよ…。

 

轟木:………君は……大切な人を失った事はあるかい?

 

海空斗:…それは、オラクルシステムのせいでって言いたいのか?

 

轟木:………いや、何でもない…。

 

海空斗:おい……何を考えてるのか知らないが、馬鹿な考えを持つのは止めとけ。

 

轟木:……不要な心配だよ

 

海空斗:………。

海空斗:(オラクルシステム。最初は波紋を広げたが、時間が経つにつれて人がAIに人生を委ねる事を受け入れ始め、最終的にはそれが当たり前の認識になった)

海空斗:(だが、その当たり前を飲み込めない一部の人間は周りから世界不適合者と見られ、オラクルシステムからも犯罪者として扱われる)

海空斗:(世界は狂ってる。そう思っても、現状を受け入れるしか俺達には無い…)

 

0:轟木の去る背中姿を見る

 

海空斗:…アンタも俺と同じなのか…。アンタも大切な人をオラクルシステムに…

 

0:現在に戻る

 

海空斗:……ッ…!待てよ!轟木:ィ!!

 

轟木:……。

 

海空斗:お前は死にたいのか…!自分の復讐の為に……!!

 

轟木:…僕は……自分の全てを奪われたにも関わらず、のうのうと生きるなんて出来ない。自分の命欲しさに世の中に従順になるなんてもってのほかだ…!そこの誰かと違ってね……!!

 

海空斗:…グッ……!!

 

轟木:ぐうの音も出ないかい?

 

海空斗:……違う…!俺は……!俺はっ……!!

 

轟木:……腰抜けがっ…

 

海空斗:…とどろ…き……

 

轟木:…目覚めた時に分かるさ。この世界の真実をね…

轟木:さぁ、暴きに行こうか…!この狂ってる世界の真実を…!!