第四話


 

◎死神さん

〇天郷(てんごう)

 

 

〇今までお勤めご苦労様

 

◎天郷様…

 

〇君は今までの経験で何を学んできた?

 

◎僕は…当たり前の日常は無いのだと感じました…

  それが毎日ある様に感じたからこそ

  当たり前に感じる

  …でも、いざ、その当たり前が無くなった時

  もっとあぁしておくべきだった

  もっとこうしておけば良かった

  そう後から思っても手遅れになる…

 

〇そうだね…

  当たり前に感じる日常に

  もっと感謝や当たり前じゃないと言う自覚を持つべきだ

 

◎僕は全く母を覚えていません…

  ですが、母もきっと

  産まれたばかりの僕にたくさんの愛情を与えてくれ

  その恩返しをするために

  ワタリドリになったのだと感じています…

 

〇……成長したね

  君は十分な経験をその身に得たようだ

  君を正式にワタリドリ卒業を認めよう

 

◎………はい…

 

〇…少し…寂しそうだね…?

 

◎寂しい……

  そう…ですね…。今まで触れてきた人も

  感情ももう見ることも触れることも出来ないのは

  寂しいのかもしれません…

 

〇……でも、学んできた事全ては

  君のここにずっとある

  忘れる事がない限り…

 

◎……はい。僕の…

  僕を作り上げた…何物にも変えられない

  …宝物です

 

〇卒業するに当たって

  君への最後の贈り物だ

 

◎……っ!!お母……さん……

 

〇役目を終えた君は

  家族の所へお帰り

 

◎天郷様……!

 

〇さぁ…お母さんが待っているよ

 

◎お母さん…!僕は…!

  僕はずっと……!!

 

 

 

〇ワタリドリは誰かの為に架け橋となる

  そうして苦労や喜びを知り

  全ての役目を終えた幼子達は皆

  自分の帰るべき場所に帰る

  君達の成長を見届ける私も

  もしかしたら寂しいのかもしれないね…

  ……今までありがとう。ワタリドリよ