スズランの花言葉(仮)


登場人物

リオン・ミクリオス:殺し屋。幼少期に捨てられ少年時代は孤児院で育つ。青年

レナ・ディーノ:王家の一人娘。幼い頃に両親を亡くす。目が生まれた時から見えない。淑女

メアリー:孤児院の主。ママとも呼ばれている。孤児院で預かった子供達に英才教育を施し、殺し屋業者として裏の顔を持つ

 

 

リオン・ミクリオス:僕は、1人の少女の暗殺を命令された。狙いは王家の資産。両親を亡くしただ一人残る娘が居なくなれば、資産は三大貴族が一つ、アルビー伯爵のものになる…

リオン・ミクリオス:ずいぶんな事だ。だが、僕には関係ない。……さようなら

 

レナ・ディーノ:あら、お客様かしら

 

リオン・ミクリオス:……ッ…!?

 

レナ・ディーノ:いらっしゃい。

レナ・ディーノ:何もおもてなしも出来ないけど、よろしいかしら?

 

リオン・ミクリオス:………なんでっ……

 

レナ・ディーノ:どうしたの?

 

リオン・ミクリオス:……いや……気遣いはしなくて良い

 

レナ・ディーノ:分かりました。それにしても…こんな何も無い土地へ何をしに?

 

リオン・ミクリオス:…何も無いなんて事は無い。この辺は自然や花々に囲まれ、和やかだ。

 

レナ・ディーノ:都会の人なの?

 

リオン・ミクリオス:そうゆう訳じゃないが……ただ、やっぱり……こうゆう場所は落ち着くんだ

 

レナ・ディーノ:そうなんですね。なら良かったです

レナ・ディーノ:私も好きなんですよ。ここから見える景色が

 

リオン・ミクリオス:…あぁ、良いものだね。

 

レナ・ディーノ:ただ……残念なのは、見ている物の色が分からないと言う事ですね…

 

リオン・ミクリオス:色が…分からない…?それはどうゆう意味かな?

 

レナ・ディーノ:私……本当は目が見えないんです

 

リオン・ミクリオス:……そうか…。だからさっきから目線に違和感があったんだね…

 

レナ・ディーノ:はい……ですが、私自身では見えていると勝手に思っています。

レナ・ディーノ:この目に写っていなくても、匂いや音、手で触ったり体で感じて、風景を見ています

 

リオン・ミクリオス:目に見えることだけが重要じゃないからね。それにしても…その状態で、よく僕に気づいたね

 

レナ・ディーノ:えぇ。誰もが人は匂いがありますから

 

リオン・ミクリオス:たったそれだけのことで……ふふっ…

 

レナ・ディーノ:何がおかしいのですか?

 

リオン・ミクリオス:いや、君にはなんでも見抜かれちゃう気がしてさ

 

レナ・ディーノ:そうですねぇ…きっと、見えない事は不自由に感じるかもしれませんが…

レナ・ディーノ:目に見えないからこそ見える世界…感じる事があるのかもしれません

 

リオン・ミクリオス:…そう…だね。すまない、長居して…。僕はこれで失礼するよ…

 

レナ・ディーノ:あの………

 

リオン・ミクリオス:…ん?

 

レナ・ディーノ:また…来ていただけますか?

 

リオン・ミクリオス:…それは…出来ない…。

 

レナ・ディーノ:気が向いたらで良いのです…。もし、また気が向いたら……

 

リオン・ミクリオス:………。

 

レナ・ディーノ:…………。

 

リオン・ミクリオス:……はぁ…。分かったよ。分かったからそんな顔しないでくれ

 

レナ・ディーノ:……!!ありがとうございます!!あ…そうだ、アナタのお名前は?

 

リオン・ミクリオス:リオン

リオン・ミクリオス:リオン・ミクリオスだ

 

レナ・ディーノ:リオン…分かりました

レナ・ディーノ:私はレナ・ディーノと申します

 

リオン・ミクリオス:……レナ。また来るよ

 

レナ・ディーノ:はい…!お待ちしております

 

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リオン・ミクリオス:〔彼女のその行動が僕には理解できなかった。けどなぜか…彼女のその時の笑顔が不思議と忘れられなかった〕

 

0:

 

レナ・ディーノ:いらっしゃい。今日も来てくれたのね?

 

リオン・ミクリオス:…っ!?あはは……凄いな。

リオン・ミクリオス:物音1つも立てず来たつもりなのに

 

レナ・ディーノ:ふふっ。それは私の長所ですから

 

リオン・ミクリオス:今日はそよ風が流れてる。庭の花が香りを連れてきて心地良いね

 

レナ・ディーノ:はい。ココには、金木犀(きんもくせい)プルメリア、山茶花(さざんか)……柊(ひいらぎ)。香りがいい花ばかりです

 

リオン・ミクリオス:へぇ…ずいぶんと花に詳しいんだね

 

レナ・ディーノ:…母が教えてくれたんです。ココに咲く花は全て母が選び、自分の手で植えました。

 

リオン・ミクリオス:この広さを自分で管理するのは大変だろうね

 

レナ・ディーノ:ふふっ…そうですね…。確かにそうかもしれません。ですが、それ以上に母は花が大好きでした。花の手入れをしている母は生き生きとしていて、また、そんな母が私は……大好きでした

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0:《レナが涙を流す》

0: 

リオン・ミクリオス:……レナ…。

 

レナ・ディーノ:……はは…すみません……つい、母を思い出してしまって……

 

リオン・ミクリオス:大丈夫だよ。君が話したいと思うなら、聞こう

 

レナ・ディーノ:……母と父は、私が幼い頃に不慮(ふりょ)の事故により亡くしました。今は両親が残した資産を頼りに、残ってくれた執事やメイドと共にひっそり暮らしています。

レナ・ディーノ:何も出来ない私には、多くの方達を雇い続けたら、お金もすぐにそこを尽きてしまう……だから今、居る方達はお父様との繋がりが深く、良心でここに居る形となっています…

 

リオン・ミクリオス:そうだったのか……だから広い屋敷なのにこんなにも物静かなんだね

 

レナ・ディーノ:……ここを売り払えば良い話しかも知れません……ですが、私には出来なかった…。父の作り上げたモノも、母が育てた花達も……私には捨てる事など出来ない……!

 

リオン・ミクリオス:……捨てる必要なんて無いさ

 

レナ・ディーノ:リオン……

 

リオン・ミクリオス:君が大切にしたいと思う。それについてきてくれる人が居る…なら、それを守り続けたいと思うのは普通じゃないかな

 

レナ・ディーノ:私なんかが……よろしいのでしょうか……?

 

リオン・ミクリオス:誰にも君を咎(とが)められない。その思いを大切にしてくれ

 

レナ・ディーノ:……ありがとう……リオン

 

0: 

 

リオン・ミクリオス:〔……本当は君の両親は不慮の事故で亡くなったんじゃない…。意図的に殺された…!ここの財産を狙い、標的にされたんだ…!だけど…中々手放さない君を次は標的に……〕

リオン・ミクリオス:〔それを知ってもなお、僕は彼女をやれるのか……?……いや…止める理由など……ない。いつもそうだったじゃないか…!!〕

 

0:

 

リオン・ミクリオス:やぁ、今日も来たよ。レナ

 

レナ・ディーノ:リオン!クスクスッ…

 

リオン・ミクリオス:ん?何かおかしいかい?

 

レナ・ディーノ:今日は静かに入ってこないのね?

 

リオン・ミクリオス:そうだねぇ、あまりやり過ぎると驚かせたい時に上手く驚かせられないだろ?

 

レナ・ディーノ:まぁ!サプライズでもしてくれるのかしら?

 

リオン・ミクリオス:オイオイ、それを言ったらサプライズにならないだろう……

 

レナ・ディーノ:ふふっ。そうね、ごめんなさい

 

リオン・ミクリオス:……良かった

 

レナ・ディーノ:……何が良かったの?

 

リオン・ミクリオス:最近のレナはよく笑う。心からの笑顔だ

 

レナ・ディーノ:リオンがよく来てくれるようになったからよ?いつもはずっと静かに、この窓から外を眺めていたものだけど…今はアナタと会話をして、生活がガラリと変わった

 

リオン・ミクリオス:それは……遠回しにうるさいって言われてるようだな

 

レナ・ディーノ:嬉しい意味の騒がしいよ(笑)もっとも、最初はもっと無口な方だと思っていたけれどね

 

リオン・ミクリオス:……そうだね…。僕自身も驚いてる。こんなに誰かと語り合うなんて事は無かったよ

 

レナ・ディーノ:幼い時はどうしていたの?

 

リオン・ミクリオス:……僕は……。

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0:《リオンの回想シーン》

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メアリー:良いわね。成績は上々…このままならちゃんとした戦力になる。頑張りなさい

 

0:

 

リオン・ミクリオス:〔僕が物心ついた時には、すでにこの孤児院に居た。まぁ、孤児院なんて体(てい)のいい看板だ…。裏では身寄りのない子供達を預かり、殺しの教育をし、闇仕事をさせる〕

リオン・ミクリオス:〔だけど、行き場がない僕達に、元より選択肢は無かった〕

 

0:

 

メアリー:アナタは産まれた時から親に捨てられた。アナタの親は子供なんて本当は要らなかったと言っていたわ。

メアリー:つまり、本来なら今、すでに死んでてもおかしくない命よ?私達のためにちゃんと活用しなさい

 

リオン・ミクリオス幼少期:分かってるよ、ママ

リオン・ミクリオス幼少期:僕はただ……言われた通りに殺すだけだ

 

0:

 

リオン・ミクリオス幼少期:僕を捨てた親の顔なんて知らない。誰が悪いとか正義なんてモノも興味無い

リオン・ミクリオス幼少期:誰もが同じで、誰もが偽善者だ。誰もが敵で、ただの標的……だから僕は、殺すだけ。

 

レナ・ディーノ:……リオン……?(微かに聞こえる)

 

リオン・ミクリオス幼少期:いつか知りもしない僕を産んだソイツ等を、この手で殺すため……!僕は……!僕はっ……!!

 

レナ・ディーノ:……リオン……!

 

0:

 

レナ・ディーノ:リオン……!!

 

リオン・ミクリオス:ハッ……!!

 

レナ・ディーノ:……大丈夫?リオン……泣いて……

0:

0:《レナがリオンの頬に触れる》

0: 

リオン・ミクリオス:僕に触れるなっ!!

 

レナ・ディーノ:っ!!

 

リオン・ミクリオス:…あ、いやっ………違うんだ………

 

レナ・ディーノ:……ごめんなさい

 

リオン・ミクリオス:……ただ……ビックリしただけだ…。

 

レナ・ディーノ:…………アナタが…泣いていたから

 

リオン・ミクリオス:えっ……?

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0:《自分で頬触り涙を取る》

0: 

リオン・ミクリオス:……なんで……泣いてなんか……

 

レナ・ディーノ:…何か、嫌な事を思い出してしまった?

 

リオン・ミクリオス:……はは……昔の思い出なんて、大したことないよ

 

レナ・ディーノ:……私を…嫌いになりましたか?

 

リオン・ミクリオス:違う!ただ……怖かっただけだ

 

レナ・ディーノ:怖い…?

 

リオン・ミクリオス:僕の中に入ってこようとした事が……単に怖かった

 

レナ・ディーノ:……アナタを知りたいと思うことは、罪かしら…?

 

リオン・ミクリオス:……そんな経験、今まで無かったから……

 

レナ・ディーノ:大丈夫

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0:《レナがゆっくりリオンの頬に手を伸ばす》

0: 

リオン・ミクリオス:……!!

 

レナ・ディーノ:私はアナタを置いていかない。アナタを知っても、何処にも行かない

 

リオン・ミクリオス:……レナ……

0:

0:《微かに聞こえる昔の声》

0: 

リオン・ミクリオス幼少期:はぁ…はぁ…!はぁ…!!

 

メアリー:アナタは人殺しの道具に過ぎない。感情なんてモノは要らない!理性なんて捨てなさい!!(セリフ被せる)

 

リオン・ミクリオス幼少期:僕は殺す…!ただ殺す…!!僕はただ目の前のモノを!!!

 

メアリー:さぁ!!殺りなさい!!リオン!!(セリフ被せる)

 

リオン・ミクリオス幼少期:僕は……!!

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0:《リオンはレナの手を優しく下ろさせる》

0:《間を開ける》

0:

リオン・ミクリオス:……ありがとう…レナ。僕は大丈夫だよ

 

レナ・ディーノ:……そう……ですか

 

リオン・ミクリオス:今日はこれで失礼するよ

 

レナ・ディーノ:分かりました…。

 

リオン・ミクリオス:…………また明日来る。

 

レナ・ディーノ:……!はい…!

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0:《孤児院”エンフィリード子院”》

0:

リオン・ミクリオス:……ただいま

 

メアリー:アナタ、一体いつまで時間をかけているの?いつものアナタならとっくに終わっているはず。アルビー伯爵の催促(さいそく)がうるさくて仕方ないわ……

 

リオン・ミクリオス:ごめん……もうちょっと待って欲しい

 

メアリー:…………。(何かをさとす)

メアリー:アナタが出来ないと言うなら、他の子に任せる。アナタはもういいわよ

 

リオン・ミクリオス:なっ!?待ってくれ!これは僕の仕事だ!

 

メアリー:その仕事を真っ当にこなせない約立たずが何を言うの?

 

リオン・ミクリオス:……くっ……!

 

メアリー:昔から教えこんでいるはずよ。アナタには感情も、理性も要らない。アナタはただ、命令通り殺すだけ

 

リオン・ミクリオス:……分かってるさ……!!

 

メアリー:分かってはいるけど、感情が邪魔をする。そうゆうことね

 

リオン・ミクリオス:……違う!!

 

メアリー:ならなぜアナタは標的を庇うの!!

 

リオン・ミクリオス:……っ!!……それは…

 

メアリー:何をたぶらかされたのか知らないけど、アナタは今回役立たずよ。大人しく引き下がりなさい

 

リオン・ミクリオス:…………分かったよ……ママ

 

メアリー:…………はぁ…………。困った子ね…。

0:

0:《リオンの自室》

0: 

リオン・ミクリオス:……レナ。君が植え付けたこの感情はなんだ…?君へのこの気持ちはなんなんだ…!?教えてくれ……!!レナ……!

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0:《レナの屋敷》

0: 

レナ・ディーノ:今日は静かに入ってきましたね!リオン!

 

リオン・ミクリオス:……っ!!あはは…やっぱりバレちゃったかぁ

 

レナ・ディーノ:もちろんです。私を甘く見られては困りますねぇ(ドヤ顔で)

レナ・ディーノ:……ん?何か、匂いがしますね…?いつもとは違う何か…

 

リオン・ミクリオス:やはり分かるんだね。はい、今日はこれを持ってきたんだ

 

レナ・ディーノ:この匂いは……花?

 

リオン・ミクリオス:そうだよ。ここの敷地には咲いていない花だ

 

レナ・ディーノ:名前はなんて言うのですか?

 

リオン・ミクリオス:スズランだ

 

レナ・ディーノ:スズラン…うん、いい香りねぇ

 

リオン・ミクリオス:気に入ってもらえると嬉しいな

 

レナ・ディーノ:…こんな風に誰かに何かを貰うのなんて初めてです!とても嬉しい…。ありがとう…!リオン

0:

リオン・ミクリオス:〔日に日に僕は、彼女の事を考えるようになる。どんな風にしたら喜ぶのだろう。どんな風にしたら悲しむのだろう〕

リオン・ミクリオス:〔そんな事ばかり…。…その度に痛感する〕

リオン・ミクリオス:〔彼女の幸せは一体なんだろうと……〕

0:

リオン・ミクリオス:…レナ…今日は大事な話しがある…

 

レナ・ディーノ:話し?

 

リオン・ミクリオス:あぁ。

 

レナ・ディーノ:何ですか?大事な話しとは

 

リオン・ミクリオス:僕は……本来であれば、君を殺すはずだった存在。言わば殺し屋だ

 

レナ・ディーノ:……そう、でしょうね…。

 

リオン・ミクリオス:君の両親は意図的に殺された。君達の財産を狙って。君もその標的だ

 

レナ・ディーノ:……やはり……そうだったんですね。薄々感ずいていました。

 

リオン・ミクリオス:……すまない。君を騙していて

 

レナ・ディーノ:私は分かっていてアナタを引き止めた。むしろ、殺されるならそれで良いと思ってた…

 

リオン・ミクリオス:……え……?

 

レナ・ディーノ:母も父も居なくなり、ただ静かに何も出来ないでここで暮らすなら…この形見の場所で殺されてしまえば、それでも良い。どうせ私の目に映るこの先は……暗闇の道でしかない

 

リオン・ミクリオス:…………。

 

レナ・ディーノ:……アナタは……私を殺しますか?

 

リオン・ミクリオス:……っ……!?何を言って……!!

 

レナ・ディーノ:それが、アナタの目的なのでしょう?リオン

 

リオン・ミクリオス:……僕は……君を殺さない…。殺せない……!

 

レナ・ディーノ:それは、なぜ?

 

リオン・ミクリオス:……知ってしまったからだ。本当は知るはずもない感情を。要らなかったはずの優しさが、僕をおかしくさせた…

リオン・ミクリオス:君の真っ直ぐな想いや優しさは、僕を変えてしまう!なんだ?この気持ちは!なんでこんなにも…苦しいんだ……!!

 

レナ・ディーノ:……ありがとう

 

リオン・ミクリオス:……え…?

 

レナ・ディーノ:今まではずっと、素直になる事なく自分を偽ってたり、自分を出すことをアナタは拒んでいた

レナ・ディーノ:でも、先程の言葉がリオンの何物でもない本心そのモノだと確信した

0:

0:《リオンの頬に触れる》

0: 

リオン・ミクリオス:……!!

 

レナ・ディーノ:リオン。ありがとう

0:

0:《そっとレナの手に自分の手を添える》

リオン・ミクリオス: ……ホント……君には……敵(かな)わないな…。

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0:《間を開けて》

0: 

リオン・ミクリオス:……君は…許嫁(いいなずけ)がすでに決まっていたようだね

 

レナ・ディーノ:………!!何故それを…!

 

リオン・ミクリオス:そのまま結婚して遠くに行くんだ

 

レナ・ディーノ:……なっ!?

 

リオン・ミクリオス:ここに居ては危険な目に会う。その前に遠く離れた場所へ…

 

レナ・ディーノ:リオンは…どうするの…?

 

リオン・ミクリオス:僕は……ここに残る

 

レナ・ディーノ:………!なぜです!!

 

リオン・ミクリオス:僕と一緒に居れば、僕を狙った奴らに追われ、今より危険になる…!

リオン・ミクリオス:僕は……一緒には居られない…

 

レナ・ディーノ:私は…リオンがいい…。許嫁など要らない…アナタが居ればそれで…

 

リオン・ミクリオス:ありがとう。そう言ってくれるだけでも嬉しいよ

 

レナ・ディーノ:嫌っ……嫌よ…!

 

リオン・ミクリオス:初めてだよ。今まで何も思わず人を殺してきた僕が、誰かを守りたいだなんてさ

 

レナ・ディーノ:リオン……

 

リオン・ミクリオス:これでお別れだ。それと最後に伝えたい事があるんだ

 

レナ・ディーノ:お願い…!行かないで……!!

 

リオン・ミクリオス:スズランの花言葉を知っているかい?スズランはね

リオン・ミクリオス:再び幸せが訪れるように

 

レナ・ディーノ:リオン…!!

 

リオン・ミクリオス:レナ…君の幸せを……願っているよ

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0:《邸の窓から飛び出す》

0: 

レナ・ディーノ:リオン…?リオン!!…アナタって…ホント…バカな人ね……。

0: 

レナ・ディーノ:私もアナタから教えてもらった。新しい事を。知らなかった感情を

レナ・ディーノ:アナタを愛おしく思えば思う程、アナタは私から離れていく……なぜ……!なぜ……私を置いていくの……リオン……

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0:《城から少し離れた森の中》

0: 

メアリー:やはり、ここに居たのね。

 

リオン・ミクリオス:…そろそろ来ると思ってたよ

 

メアリー:狙いはアナタじゃないわ。それにもう、アナタの役目は終わった。この件について気にする必要はない

 

リオン・ミクリオス:そうは行かないよ。この先に行かせるつもりはないからね

 

メアリー:……ククッ…!あはははは!!

 

リオン・ミクリオス:……!?

 

メアリー:まさかアナタの口からそんな言葉が出てくるとはね?驚きを隠せない

メアリー:アナタは孤児院の中でも特に優れていて、無感情で、無知で…それでいて、1番扱いやすかった

メアリー:…………はずだったのよ…!

メアリー:それがまさか、1人の女にたぶらかされて、そこまで変わってしまうなんて……人間って分からない物ね

 

リオン・ミクリオス:……ママは僕を1度だって人間のように扱ったことは無かった……!!

 

メアリー:当たり前よ。たまたまそこに居たから拾っただけのただの人殺しの道具じゃない。まさか…人間のように扱ってほしかったの?愛が欲しいだなんてつまらない事言うわけじゃないでしょうね…?

 

リオン・ミクリオス:……レナは……レナだけは、好きにさせない!!

 

メアリー:アナタの血に染った手では、白馬の王子様にはなれないのよ

 

リオン・ミクリオス:そんな事は分かりきってる!だからせめて……!彼女の幸せのために犠牲にならなれる……!!

 

メアリー:ならっ!!

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0:《刀を振られリオンも刀を抜き受け止める》

0: 

リオン・ミクリオス:……グッ……!!

 

メアリー:用無しのアナタは早く消え失せなさいっ!!

0:

0:《刀を打ち合う》 

レナ・ディーノ:リオン……!リオン……!!(遠くから聞こえる)

 

リオン・ミクリオス:…なっ…!?レナ……!?

 

メアリー:……ふんっ!!

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0:《リオンが蹴り飛ばされる》 

リオン・ミクリオス:……ガハッ……!

 

レナ・ディーノ:……!!リオン!!(聞こえてリオンの存在を確認する)

 

メアリー:少し昔のアナタならこれぐらいじゃ動揺しなかった

 

リオン・ミクリオス:…っ………!!

 

メアリー:背負う物を得て、本当に弱くなったわ……リオン。アナタの望み通り…彼女のために殺してあげる

0:

0:《刀をリオン腹部に突き刺す》 

リオン・ミクリオス:……グハッ……!!

 

レナ・ディーノ:………!?リオン……!リオン!!

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0:《急いで駆け寄る》

0: 

リオン・ミクリオス:……ママ……

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0:《刺さった刀を強く握り締める》

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メアリー:……!?

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0:《メアリーが刀を抜こうとするがリオンは抜かせない》

0: 

メアリー:何をしている!?…クッ!手を離しなさい!!

 

リオン・ミクリオス:……今まで…ありがとう

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0:《リオンの刀をメアリーに突き刺す》

0: 

メアリー:……グフッ……!!アナタ……この私に…!……なぜ……!!

 

リオン・ミクリオス:……僕はもう…ママの言いなりになる道具じゃ……なくなったんだ…

 

メアリー:……アナタを救った……私に向かって……!アナタは……!アナ……タ……はっ……!!

0:

0:《メアリーが倒れる》

0: 

レナ・ディーノ:リオン!…リオン!!

 

リオン・ミクリオス:……レ……ナ

 

レナ・ディーノ:こんなの…嘘よ……。嫌よ!リオン!!

 

リオン・ミクリオス:……僕は…ずっと考えていた……。君へのこの感情は…なんだろうって……。ようやく……分かったんだ……

 

レナ・ディーノ:ダメ…!これ以上話したら!!

 

リオン・ミクリオス:親の愛も……誰からの愛も…優しさも知らなかった僕が……君と出会って知った……だから僕も……君に……グッ…!!

 

レナ・ディーノ:お願いだから…!私を置いていかないで……!!もう……一人は嫌っ……!!

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0:《リオンがレナの頬に手を触れる》

0: 

レナ・ディーノ:……リ…オン……?

 

リオン・ミクリオス:…………君を…………愛してる……レナ…。

 

レナ・ディーノ:…………!!

レナ・ディーノ:…………わた……しも……私もよ!!リオン……!!私も愛してる!!

 

リオン・ミクリオス:……(静かにリオンが微笑む)

 

レナ・ディーノ:私もアナタを……!!

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0:《リオンの手が離れ地面を打ち付ける》

0: 

レナ・ディーノ:…………っ!?リオン…………?

 

リオン・ミクリオス:…………。

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0:《リオンの身体を強く抱きしめる》

0: 

レナ・ディーノ:リオン……!リオン……!!あぁ……!……あぁぁああっ……!!(しばらく泣き続ける)

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0:《間を開け

0:

レナ・ディーノ:あの場所に居れば、私を狙った人達がまた来るかもしれない。母と父の思い出が詰まったこの場所を捨てるのは苦しい…でも、リオンとの時間を裂かれるのはもっと嫌だった……。

レナ・ディーノ:許嫁なんて要らない。ただ、私に生きて欲しいと言うのがアナタの望みなら……アナタを連れて、誰にも目が触れない場所へと行くわ……。

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0:《そよ風が草むらと髪をなびかせる》

0: 

レナ・ディーノ:そのうち、スズランをこの場所にも植えましょう。

0:

レナ・ディーノ:例え目が見えなくても

レナ・ディーノ:アナタの愛は、確かに私には見えていた。父の作り上げたモノも、母の育てた花達も、ここに無くても、アナタと居られるこの時間は……幸せよ

0:

レナ・ディーノ:………………愛してる。リオン