12歳の思い出


◎早先 和人(はやさき  かずと)  12歳

〇早先 静音(はやさき  しずね)姉  17歳

 

 

◎「僕が人を殺したのは」

 

〇……っ!お父さん…!?お母…さん…!?

 

……。

 

〇その包丁…!和人、アナタがやったの!?

 

◎…お姉ちゃん、もう、我慢しなくていいんだよ

 

〇………え?

 

◎もう、誰もお姉ちゃんを苦しませる人はいないから。もう誰にも縛られなくていいんだ。

 

〇和人……

 

 

 

◎「12歳の時でした」

 

 

 

◎お父さんもお母さんも皆、僕が殺ったんだよ?僕が…

 

           (姉が和人を抱きしめる)

 

〇ダメ!和人!!和人は何もしてない!これは私が…!私が……!!

 

◎僕がお姉ちゃんを守ってあげるよ。僕が……

 

 

 

◎「もう、苦しまなくて済むんだよね?お姉ちゃん」

 

 

 

◎あれ?ベランダ開いたままだ…

 

◎…!?…何してるのお姉ちゃん…

 

〇和人…!なんでここに…

 

◎なんでそんな所に立ってるの?おかしいよ!!もう、お姉ちゃんは辛くないでしょ?もう苦しくないんでしょ!?

 

〇………私はね、確かに親からは解放された。でも…まとわりついてくるの……私の過去が。あの忌々しい記憶を、今でも思い出しちゃうの………

 

◎大丈夫だよ!僕がいるから……

 

〇アンタが居てもどうにもならないよ!!

 

◎………え…?

 

〇アイツに色んな事されて、自分の身体を見る度に思い知らされる!私はもう元には戻れない…!アイツに汚されたんだって!!

 

〇寝てる時だってそう!最近はアイツの夢ばかり見る。アイツに暴力を振られて…汚く犯されて……私が私じゃなくなる………私って何……?

 

◎お姉……ちゃん…

 

〇ほら、見て。私はずっとアイツの物だって証明。掻きむしっても掻きむしっても取れない!アイツはもうこの世には居ないはずなのに…!私にまとわりついてくる!!いつまでもいつまでも!!

 

◎……。

 

〇だからね…私もう……

 

 

 

◎「その時思ったんだ」

 

 

 

〇……………疲れちゃったよ

 

 

 

◎「僕がお姉ちゃんを守らなくちゃ」

 

 

          (ナイフ刺す)

 

 

〇うっ…!!……和…人。

 

◎僕が守ってあげるよ…?

 

〇あり……が…と…

 

◎僕は…お姉ちゃんが……

 

〇………ごめ…ん………ね…

 

◎大好き……だよ…。