それでも愛して欲しかった


◎実愛(みのり)

〇晴太(せいた)

 

それでも親を愛していたし

それでも親に愛されたかった

 

愛を知らない彼女に

 

他人から貰う愛情にすら気づかない

そんな報われない彼女のお話

 

 

 

◎ただ単に、愛して欲しかった。認めて欲しかった。

    それだけなの…それだけで良かったのに……!

 

〇落ち着け実愛!

 

◎笑っちゃうよね…私って…何…?

 

〇とりあえず落ち着いて俺の話しを…!

 

◎落ち着けるわけないでしょ!!

 

〇…っ…!!

 

◎私が何したか分かってるの?

    私は…!私は……!!

 

〇もういい!言うな…!

 

◎私は……親をこの手で殺した…!!

 

〇お前は何も悪くない!しょうがなかったんだ!!

 

◎私はいつも邪魔者扱い。

    親からは軽蔑(けいべつ)の目でいつも見られる!

    怖かった...!ずっとずっとずっと...!

 

分かってる...俺はお前のこと分かってる...!だから...!!

 

◎分かってる…?一体私の何を…

 

〇お前のことをずっと隣で見てきた。

     嬉しい顔も悲しい顔も知ってる…!ちゃんと見てた

 

◎見てるだけで分かるの?

 

〇そうだよ…だって俺は……実愛を…

 

◎…凄いね。私は分からないよ。

    清太君のことも、自分のことも…

 

〇………実愛には、俺がついてるから…

 

◎信用できない

 

〇…え?

 

◎結局私の味方なんて誰一人いない!!

 

〇そんなことない!

    俺はいつだってお前を肯定してきたじゃないか!!

    俺は実愛の味方だ!!

 

◎なら...なんで私を止められなかったの...?

 

〇...っ!...それは

 

◎もう...戻れないよ...。見て?私の手...

 

〇やめろ…

 

◎こんなに親の血で汚れてる...

 

〇...やめろって……

 

◎あんなに嫌だった親を自分の手で殺して

 とても心地よかったなんて狂ってるでしょ...?

 

〇もうやめてくれ!!

 

◎お父さん...お母さん...こんな私で...ごめんなさい...。

 

〇ダメだ!

 

◎...今...そっちに逝くね...。

 

〇実愛ぃぃぃ!!!

 

 

 

〇俺は…なにも出来なかった。

 ただただ、実愛を見ているしか出来ない

 

〇俺には何が出来たんだ?一体

 どうしてやれば良かったんだ……

 教えてくれ…実愛………

 

 

◎「生まれ変わったら…お父さんとお母さんは

 今度はちゃんと愛してくれるかな?」

 

◎「次はね、ちゃんといい子になるから…

 ちゃんと愛してくれる子に………」

 

〇実愛………実愛…!

 実愛ぃぃぃ!!あぁぁあ………!!!