スズランの花言葉


 

〇レナ・ディーノ

◎リオン・ミクリオス

 

 

◎僕は

  1人の少女の暗殺を命令された

 

 

 

◎随分(ずいぶん)な事だ。

  目が見えないお城のお嬢様が標的とは…

 

◎だが、僕には関係ない。

  許してくれよ

 

◯あら、お客様かしら

 

◎……ッ…!?

 

◯いらっしゃい。

  何もおもてなしも出来ないけど

  よろしいかしら?

 

◎………なんでっ……

 

◯どうしたの?

 

◎……いや……

  気遣いはしなくて良い

 

◯分かりました。

  それにしても

  こんな何も無い地に何をしに?

 

◎…何も無いなんて事は無い。

  この辺は自然や花々に囲まれ

  和やかだ。

 

◯都会の人なの?

 

◎そうゆう訳じゃないが……

  ただ、やっぱり

  こうゆう場所は落ち着くんだ

 

◯そうなんですね。

  なら良かったです。

  私も好きなんですよ。

  ここから見える景色が

 

◎………見える?

 

◯見えますよ。

  この目に写っていなくても

  匂いや音手で触ったり

  体で感じて風景を見ています

 

◎だから僕に気付いたわけだ

 

◯えぇ。

  誰もが人は匂いがありますから

 

◎たったそれだけのことで……ふふっ…

 

◯何がおかしいのですか?

 

◎君には

   なんでも見抜かれちゃう気がして。

 

◯そうですねぇ…

  きっと、見えない事は

  不自由に感じるかもしれませんが…

  目に見えないからこそ

  見える世界…

  感じる事があるのかもしれません

 

◎………僕はこれで失礼するよ…

 

◯あの………

 

◎…なんだい?

 

○また…来ていただけますか?

 

◎……。

 

○気が向いたらで良いのです…。

  もし、また気が向いたら……

 

◎…あぁ

 

○…貴方のお名前は?

 

◎リオン

  リオン・ミクリオスだ

 

○リオン…分かりました

  私はレナ・ディーノと申します

 

◎……レナ

  また来るよ

 

○はい…!

  お待ちしております

 

 

 

 

◎愚かな事だ

  そう言った時の

  彼女の何よりも嬉しそうな表情が

  未だに忘れられないなんて…

 

 

 

 

 

○いらっしゃい。

  今日も来てくれたのね?

 

◎あはは、凄いな。

  物音1つも立てず来たつもりなのに

 

○ふふっ

  私を甘く見られるのは困りますね

 

◎今日はこれを持ってきた

 

○これは……花?

 

◎そうだよ

  ここの敷地には咲いていない花だ

 

○名前はなんて言うのですか?

 

◎スズランだ

 

○スズラン…

  いい香りね

 

◎気に入ってもらえると嬉しいな

 

○…こんな風に誰かに何かを貰うのなんて初めてです

  とても嬉しい…

  ありがとう…!リオン

 

 

 

 

◎日に日に僕は

  彼女の事を考えるようになる

  どんな風にしたら喜ぶのだろう

  どんな風にしたら悲しむのだろう

  そんな事ばかり……

  …その度に痛感する…

  彼女の幸せは一体なんだろうと

 

 

 

 

○今日もスズランを持ってきてくれたのですね

 

◎相変わらずの察知能力だな

 

○花の匂いも覚えたし

  リオンの匂いもすぐに分かりますよ?

 

◎それじゃあ僕が香水付けたら

  上手く誤魔化せるのかな

 

〇香水なんてたまったものじゃないわ!

  私はリオンのそのままが好きなんですから

 

◎…ははっ…ありがとう……

 

〇ホントにそう思っているの?

 

◎え?

 

〇アナタの声、震えてる

 

◎何を言って…

 

〇私には嘘はつけない

 

◎…参ったな…降参だ…

 

〇…リオン…

 

◎今日はお別れを言いに来たんだ。

  もうここに来ることはない

 

〇待って!そんなの認めない…!

  なぜ急に!!

 

◎君はもう気づいているはずだ

  僕がどうゆう人間で

  何故ここに来たのか

 

○それはっ………!

 

◎君は…許嫁(いいなずけ)が決まったようだね

 

○……えぇ…。

 

◎そのまま結婚して遠くに行くんだ

 

○……!!

 

◎ここに居てはまた危険な目に会う

  その前に遠く離れた場所へ…

 

○リオンは!?

  リオンはどうするの!?

 

◎僕は……ここに残る

 

○嫌よ!許嫁なんて要らない!

  私は……!私は……!!

 

◎僕と一緒に居れば

  僕を狙った奴らに追われ

  今より危険になる…!

  僕は……一緒には居られない…

 

○私は…リオンがいい…

  リオンと居たいの……

 

◎ありがとう

  そう言ってくれるだけでも嬉しいよ

 

○嫌っ……嫌よ…!

 

◎これでお別れだ

  それと最後に伝えたい事があるんだ

 

○お願い…!行かないで……!!

 

◎スズランの花言葉を知っているかい?

  スズランはね

  再び幸せが訪れるように

 

○リオン…!!

 

◎レナ…君の幸せを

  願っているよ

 

〇リオン…?

 

 

 

〇リオン…!?

  そんな…嘘よ……

  …嘘…!!

  …返事をして…!!リオン!!

 

 

〇……っ!!

  …アナタって…ホント…

  バカな人ね……。

 

 

 

レナは貴族の娘、言わばお嬢様である。だが、そんなレナは産まれた時から目が見えない

そのため、お金目当てて拐われたり、命を狙われるのは日常茶飯事だった

 

リオンもその1人。

殺し屋企業で生活しているリオンにレナを殺せと言う依頼が届く

 

目が見えないため、殺すのは容易いと屋敷に侵入したリオンは、意外にもあっさりレナに気づかれた

 

レナのあまりにも美しい姿と「いらっしゃい、殺し屋さん」と言う何かを悟った言葉に動揺した

 

最初は殺す機会を伺うために何回か訪れるように。

スズランなんかもいつしか持ち込んで、喜ぶ姿が見たい、だなんて思っていた

 

依頼された期限が目前に迫って彼は決断しざるおえなかった

そう、彼女の幸せのために

彼女の笑顔のために

 

自決するべきだと

 

スズランの花言葉は再び幸せが訪れるように…

 

哀れにも、殺し屋は1人の少女に恋をして、いつしか、レナの幸せを願っていた