燃え尽きる檻の中で


◎代宗時 市之(だいそうじ しの)

〇代宗時 辰正(だいそうじ ときまさ)

 

 

〇とうとう

 ここまで圧されて(おされて)しまったか…。

 市之

 

◎はい。

 

〇お前はここを去れ

 

◎…何故ですか

 

〇この城も最後の砦。

 よもや後には退けぬ。

 私もここが年貢の納め時よ…故に…

 

◎故に私を逃がそうと?考えが浅はかです

 

〇何…?

 

◎私は、代宗時辰正の妻。他ならぬ者ではない。

 そんな私が、尻尾を巻いて逃げたなど一生の恥です!

 

〇市之!私はお前のためを思って…!

 

◎私を思い、考えなさるなら尚更のこと!

 そのような言葉は聞きとうございませぬ!

 

〇…っ!!

 

◎私は、辰正さまの妻になれ…幸せでございます。

 何故なら、ここまで私のことを考えてくださるのですから…

 

〇…そうか……。

 私はどうやら、追い詰められて焦っていたようだ…。

 不敬な発言、すまなかったな

 

◎大丈夫です。私は、いつでも貴方様をご理解しているつもりです。

 

〇………はっはっは!

 

◎辰正さま?

 

〇やはり、これほど私を理解して思ってくれる者は居ない!

 私ですら市之には敵わんよ

 

◎左様に褒めて下さいまして…

 照れてしまいます…。

 

〇…ふむ。奴らが来た…か…。

 

◎覚悟は出来ております

 

〇ほう、ならば問おう。市之

 

◎…はい

 

〇最後まで私と共に居てくれるか?

 

◎生きとし生ける最後まで…この身は貴方と共に。

 

〇……愛している。市之

 

◎愛しております。辰正さま